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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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特集:火山情報

防災意識を高め適切な行動に結びつけるための住民説明会

 鹿児島県の口永良部島では、平成27年5月29日に爆発的噴火が発生し、火砕流は北西側の向江浜地区の海岸まで達した。気象庁は噴火警戒レベルを3(入山規制)から5(避難)に引上げた。これを受けて屋久島町は口永良部島の全島を対象に避難指示を発令し、全島民が屋久島へ避難した。

 口永良部島の新岳は、約10ヶ月前の平成26年8月3日に明瞭な前兆現象も無いなか、34年ぶりに噴火した。この噴火に伴い噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)※から3(入山規制)に引上げた。当時は台風第11号の接近もあり、再噴火した際に島外への避難が困難になる状況も考えられたため、約70名の島民が一時的に島外に自主避難した。(※当時のキーワードは(平常))
 その後、本年1月24日には火山ガスの増加や島内を震源とする震度1の地震も発生した。本年3月24日の夜間には、遠望(高感度)カメラで口永良部島では初めての火映を観測し、山体表面の熱異常域内の温度上昇も認められた。これらのことから火山活動がさらに高まっていると評価し、口永良部島に気象庁機動調査班(以下、機動班)2名を常駐させ、目視観測、地表面温度分布観測、光波測距装置による測量、漁船による海上からの火山ガス観測等を行うなどの観測強化を図るとともに、屋久島町口永良部島出張所(以下、出張所)職員と火山活動や火山防災について情報交換を行った。

 気象庁では、これまでも年2回の定期的な機動観測時に住民説明会を行い、火山活動や火山防災についての普及・啓発を行ってきた。昨年8月3日の噴火後に機動班を派遣したときも、現地観測を実施するとともに、住民説明会を開催した。その後も本年4月までに、出張所と連携して7回の住民説明会を開催してきた(参加者30~54名)。また、住民からの要望を受け、地震の発生状況と気象情報を定時に屋久島町と出張所へ提供していた。
 本年5月23日08時00分に口永良部島島内のごく浅いところを震源とする地震が発生し、震度3を観測した。火山活動がさらに高まったと評価し、噴火警戒レベル4、5への引上げも想定し、屋久島町及び地元消防団の協力を得て同日16時10分から急遽住民説明会を行った。説明会では、地震の震源位置が震度1の地震と比較して浅くなっていること、過去には島内で有感となる地震が発生したのち噴火した例があることなどを丁寧に説明した。また、今後どのような現象が観測された場合に噴火警戒レベルを引上げるかについて、具体的に明記した資料を使って説明した。さらに、もし噴火警戒レベルを引上げた場合は、屋久島町の指示に従い避難等の行動を行っていただくよう説明した。あわせて消防団から住民に対し「噴火したときには、これまでの訓練通り、番屋ヶ峰の避難所に自主的に避難してほしい。」と説明があった。質疑応答等の最後に、住民から「機動班は火山活動が低調になるまで常駐してほしい。」との意見があった。機動班派遣の主目的は火山の表面現象等の観測であるが、現地に常駐することが住民の方の精神的な支えになっていたと改めて実感した。

 この住民説明会の6日後の5月29日09時59分に爆発的噴火が発生した。住民のほとんどは、これまでの避難訓練通りに番屋ケ峰の避難所へ速やかに避難され、一人の犠牲者を出すことも無く、その日のうちに全島避難が行われた。

 気象庁では、噴火発生前から住民説明会を行ない、火山防災意識等の普及・啓発に努めてきた。火山活動が活発化した後は、島内に機動班を常駐させ、日常的に住民と接していたことや、住民説明会で火山活動の現状を細かく報告していたことから、住民の火山防災に対する意識はさらに高くなっていた。さらに、関係機関との連携強化に努めた結果、屋久島町が噴火時の一次避難場所を決め、避難訓練を行い、住民各自が避難手順を確認するなども行われていた。遭遇することが稀な火山噴火では、住民が火山防災意識を高く持ち、関係機関との情報共有を密にし、避難訓練を行うことが大きな意味をもつ。今回の気象庁の対応は、これに少なからず貢献できたものと考えている。

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(福岡管区気象台 火山・監視情報センター 火山防災官 川村安)