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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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特集:大学の防災

地区本部訓練という提案

 2012年9月24日に、4回目となる東京大学災害対策本部訓練が実施された。昨年度の工学系研究科等に引き続き、今年度は医学部附属病院(本郷)と合同で行われた。災害拠点病院である医学部附属病院の機能維持と本部・病院の連携・支援体制の構築を目的として実施された(平成24年度 本部・病院合同防災訓練実施報告より)。
病院はこれまでも独自に、実践的な防災訓練を積み重ねてきており、自立的な応急対応計画を立てている。拠点病院として病院機能の自立的継続は不可欠であるが、同時に全学的に周辺機能を維持し、病院の負担を減らすために必要な支援を行うことは、東京大学にとって重要なミッションのひとつである。
 そのためにも、具体的な支援内容と業務分担とを明確にしておくことが求められる。今回の訓練では、活動の確認として、救急搬入が予想される龍岡門から病院までの動線の確立と、トリアージ訓練やDMATによるヘリコプター広域搬送訓練を実施した(図1、2)。広域避難者と救急外来患者との分離と龍岡門から1次トリアージゾーンまでの誘導までを大学本部警備誘導班が担い、病院へ受け渡すことになる。原則として、医療的な判断が必要な事例は、すべて病院に受け渡し、大学本部の任務は医療資源の物理的な負担を減らすことにある。

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 また、本部と病院との間で、外部からの問い合わせについても具体的事例について分担方針を確認した。外来診療を行っているかどうかなどは大学本部が、患者の個々の状況や医療判断は病院側が対応することになる。このほか、施設面での改良についても課題が見いだされ、対応が進められている。
 附属病院以外にも、保健センターによる学内被災者向けの応急救護所設置訓練やバリヤフリー支援室による障害等を持つ学生・教職員の個別支援計画確認訓練なども実施し、検証が行われた。いずれも個別・具体的な訓練実施だからこそ、課題が見いだされ、検証がなされたと言うことができる。
 大学本部運営についても、被害概況表やパソコンを使用した問い合わせ等の集約や提示方法(図3)、被害報告様式、マップの充実(図4)などこれまでの訓練を通じて改善を図ってきたものも少なくない。

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 その一方で、訓練を通じて見いだされた課題や残された課題もある。たとえば、救急チームの編成面で、火災や倒壊の発生状況に応じて、医療資源を再編する必要があるが、学外の被害状況はテレビ・ラジオ等から十分な情報が得られるか確実ではない。次善の策として、既往災害事例を元に、1km程度ならびに4km程度に目印となる建物を設定し、目視で情報を得ることも訓練に取り込んだ。抜本的には、外部機関との連携が必要となる。また、拠点病院が受け入れるのは中等症以上であり、多数を占める軽傷者への対応をどうするかも外部機関との連携が必要となる。
 このように個別・具体的な訓練は実践的であり、かつ課題発掘にも有効である。しかし、同時に防災対策あるいは防災計画として見た場合に、個別計画間の調整や全体計画の中での位置づけが求められることは言うまでもない。そこで、これまで訓練企画に協力してきたCIDIRとして、全体像に対する提案を述べていくことにしたい。

表1 東京大学の防災対策と本部訓練
1981年 「東京大学の防災対策(昭和56年版)」
  1978年宮城県沖地震
2008年
「東京大学の防災対策(改定版)」 

1995年兵庫県南部地震
2009年 第1回本部訓練;本部設置訓練と設備確認 

改善点:4班体制への集約と本部設置基準の設定
2010年  第2回本部訓練;各班の初動体制の具体化
  改善点:大学本部目標の確認
2011年 第3回本部訓練;学生・教職員の命を守る 
  改善点:初動対応を建物単位へ変更しセイフティーエリアを割り当て


 表1に、東京大学の防災対策の経過と本部訓練を通じて修正されてきた概要をまとめた。2008年「東京大学の防災対策(改訂版)によると、「東京大学の防災対策」は1978年宮城県沖地震を契機に作成され、1995年兵庫県南部地震で改訂版が出された。その後、2010年3月11日に発生した 東日本大震災での経験を元に、初動体制の見直しや備蓄の目安、応急危険度判定士の充実などが実施されている。
 このうち、初動体制については、平成24年7月30日付けの「震度5弱以上の地震における初動の行動指針及び災害時の部局避難場所について(通知)」で、災害発生直後においては、講義室等で対応し、次いで建物(号館)単位で避難、初期消火、点呼等を行うことが明確化された。災害対策本部の指示では間に合わないこと、および講義室や研究室ならびに建物毎に状況が大きく異なるためである。その上、建物周辺に危険が迫っている場合に避難する2次避難場所を建物毎に割り当てている。
 図5に示したように、学内には、一つの建物で閉じている部局もあれば、複数の建物に分かれている部局もある。なかには同じ建物を複数部局が共同で利用している事例も少なくない。学生や教員についてみると、時間によっては所属部局と異なるキャンパスや建物で履修をしていたり、研究をしているなどその動きは多様である。地域的にも分散しており、身分上の部局単位よりも、この方針で示された建物(号館)単位という空間的な対応の方が現実的だろう。

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 この初動体制を、直後の自立的分散から徐々に組織化を図っていく段階的な過程、つまり組織化へのステップと考えるならば、次の段階では、建物(号館)単位から直接、部局および大学本部の指示・連絡下に入るという戦略もあるが、その過程の中間に当たる大くくりの集合単位を「地区を単位」とする戦略も考えられる。つまり、学内を2次避難場所に当たるセイフティーエリアで幾つかの地区に再編成し、状況がある程度安定するまで地区単位で対応に当たり、安定した後に基本単位である部局へと移行していく、というものである。
 地区単位という空間的な対応を、次のステップまで拡張する仕組みであるとも言える。この仕組みは、個々の部局単位での対応と比べると、セイフティーエリアへの避難と空間的に連動しており、管理しやすいという利点がある。また、地区を広めにとれば、個々の部局で対応する方式と比べて、人的資源やホール等の施設を有効に活用できるという利点もある。この方式は、決して大学という組織だけではなく、複数立地・自立型事業所を含む組織に一般化可能であろう。論理的には、利点が多いと考えられるが、その実行性を確認していく訓練を実施し、検証していくことを提案したい。

(田中 淳)