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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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シリーズ:東日本大震災

仙台生活支障調査の結果から(前号からのつづき)

 東日本大震災の発生から2年が経過しようとし、新たな地域づくりや、産業や雇用の創出など、政策動向と社会的関心の多くは「復興」に向かっている。さりながら、被災直後の様子を検証し、今後の防災対策に資する知見を得ようとする継続的な試みが必要であることに変わりはない。
 本ニュースレター前号の「シリーズ東日本大震災」では、CIDIRが実施した仙台市の被災者の生活困難に関する調査結果の一部のみを紹介した(調査方法は「注」を参照)。ニュースレター今号でも、引き続きこの調査結果を紹介したい。
 CIDIRが仙台市に注目したのは、人口が集中する都市部での生活支障を実証的に明らかにしようと考えたからである。仙台市は人口が約100万人(2012年2月1日現在)を超える大都市であり、このような大都市がライフラインなどの途絶により生活支障に見舞われた事例は、阪神淡路大震災以降わが国では見当たらない。
 仙台市の生活支障について、電気・ガス・水道の停止期間の平均値を表したのが表1である。我々の調査によると、大まかにいえば、電気は1週間弱、ガスは1ヶ月弱、水道は約10日使えなかったことがわかる。
 生活用品を元通りに購入できるようになった時期をまとめたのが、図1である。被災から約2週間が経過した3月26日から31日にかけて、ようやく約半数の住民が「水・食品・ガソリン」を元通りに買えるようになってきたことがわかる。「オムツなどのベビー用品」が元通りに購入できるようになった時期は早いが、「介護用品」が手に入りにくい時期が続いていたのが対照的である。ほぼ元通りに買えるようになるのは、被災から約2ヶ月後の5月になってからである
 「生活が元通りになるまでにかかった日数」を質問したところ、平均59.0日であった。ところが、このような生活困難に直面したにもかかわらず、震災発生後に「一度も避難をしていない」との回答が70.3%にのぼる。多くの住民が自宅に留まっていたようである。
 以上の結果を単純に一般化することはできないが、このままでは今後の起こりうる大災害でも大都市部の被災者が被災地内にとどまり、長期にわたり生活困難に直面するであろうことは想像に難くない。しかし、多くの住民が被災したまま留まっている大都市の内部に向けて支援物資を運ぶことは、物流網の被害の懸念があるため容易ではないだろう。そのため、こうした一種の「質的なシナリオ」にもとづき、例えば、潜在的な被災地とされる地域での備蓄物資の量や品揃え、誰が何を備蓄するのかという役割分担の再検討を進めることが必要ではないだろうか。

(地引 泰人)

(注)
調査対象は、地震が発生した2011年3月11日の震災後も仙台市内で生活し、かつ震災時に津波の被害を受けていない宮城県仙台市内在住の20歳~80歳の男女個人である。2012年2月17日から2月26日にかけてWebアンケート調査法で実施した。年齢層・性別について割り当てをし、最終的に989件の有効回答を得た。

謝辞:本研究は、国土交通省国土技術政策総合研究所からの委託研究「水害時の状況に応じた避難及び避難情報提供に関する調査研究」の一環として行った。

表1 電気・ガス・水道の停止期間の平均値


日数* 時間** 止まった人
電気 6.0 8.9 98.8
ガス 29.4 6.6
80.2
水道 11.7 7.7 76.9

  • *表中の「日数」の平均値の算出には、ライフライン停止が24時間未満の回答者を含めていない。
  • **表中の「時間」とは、ライフラインの停止が24時間未満の場合の停止時間を意味する。

図1 仙台調査:生活用品を元通りに購入できるようになった時期
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