newsletter23号テキスト5

東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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CIDIR Report

WEBアプリ「あなたのまちの首都直下地震」の開発と形成的評価

■はじめに

 近年防災教育においては知識教授だけでなく、判断や行動をさせる段階まで対象にすることの重要性が指摘されている。震災時に主体的に判断・行動する態度を育成する教材としては、1つの状況を前提にしたシナリオ型教材に注目が集まっているが、学習者が置かれる多様な状況に対応できる教材は開発されていない。しかし、学習者の状況と異なる1つの状況を前提にした場合、①非現実的楽観主義に陥ってしまう、②学習者の状況に合った震災場面が想定できない、③災害時の判断や対応が一様になるという問題が生じてしまう。そこでここでは、特に対応が急がれている首都直下地震を想定し、学習者の状況に対応した震災場面を想定させることを目的に開発した一連の教材とその形成的評価の概要を紹介する。

■教材の概要

 教材は、先に挙げた3つの問題点に対応する形で準備した。まず、非現実的楽観主義の払拭を行う方法としては、震災時の詳細な状況が提示され、かつ震災時の判断や行動が含まれているビデオ教材を提示する。本研究では首都直下地震の想定シナリオを詳細に描いたアニメ『東京マグニチュード 8.0』の編集映像を導入として利用する。次に学習者の状況に合った場面の設定を行うために、学習者の関心が最も高いと思われる居住地域の危険度が診断できるWEBアプリ「あなたのまちと首都直下地震」(https://www.tokyojishin.org/anamachi/)を開発した。本アプリでは住所を入力すれば想定されている18の首都直下地震に関する各地域の想定震度の情報をGoogle MAP上に重ねて表示できるようにしている。その他にも内閣府や東京都が提供している地域別の「ゆれやすさ」や「建物倒壊危険度」や「火災危険度」や「総合危険度」の情報も地図上に重ねられ、各情報をまとめて提示できるようになっている。教材体験後は、地域や学習者特有の状況をより考慮した学習を促したり、複数の盲点を相互補完するためにFacebookのグループに誘導し、教材体験者同士で学習内容の共有と議論を行えるようにする。

■形成的評価

 以上の一連の教材の効果を形成的に評価するため、特定のFacebookグループを用意し、Facebookグループの中にビデオ教材とWEBアプリのリンクを用意した。次に年代や職業や性別が様々な25名の一般人と防災の専門家を集め、2014年の1/17日〜19日の間に形成的評価を行った。実験の手続きとしては、まず17日に各自で教材を体験してもらい、「首都直下地震が発生したらどのようなことが起きると思うか」と「首都直下地震が発生した際に起こると思ったことに対し、どのような行動を取れば良いと思うか」というエッセー課題に答える形で投稿してもらった。次に、18日と19日の間に他の人の投稿を全て読み、疑問に思ったことをコメントし、お互いに議論をするようにした。そして最後にもう一度同様のエッセー課題に答えてもらい、事後に各教材に関するアンケートを記入してもらった。
 その結果、震災時に起きることの想定が交流後に多くなったり、取るべき行動も具体的になっていることがわかった。また、WEBアプリ「あなたのまちと首都直下地震」に対する事後アンケートでは、「どちらかと言うと「都心直下の地震は人ごと」との感がありましたが、考え方は改めました。職場や自宅など複数箇所で設定してみたが、どこも倒壊の可能性などが高く、日頃の意識を改めようと思った」という回答が見られ、学習者の状況に対応することの効果が見られた。また、Facebookでの交流に対する事後アンケートでは、「私が留守をしている間の家族について主婦層の方の意見を伺う事が出来、問題提起として家内と話し合う事が出来、とても有意義な意見交換の場として活用する事が出来た。」という回答が見られ、お互いの盲点を相互補完したり、多様な観点を学べていることがわかった。
 このように、学習者の状況に対応した震災場面を想定させられる一連の教材を構成することは、震災を自分ごととして捉えさせ、リアルな震災イメージや対応策を相互補完させるトリガーになるといえる。今後は、学習者の状況に対応したシナリオ型教材を開発し、さらに効果的な一連の教材を構成する予定である。

 なお本研究は、科学研究費助成事業基盤研究(A)24240103「学習者の状況および知識構造に対応したシナリオ型防災教育教材の開発」の助成を受けています。

(池尻 良平 ~情報学環 特任助教~)