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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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東日本大震災から3年

自治体の災害・避難情報の伝達体制の現状と課題

 東日本大震災で津波警報や避難の呼びかけを見聞きした手段としては「防災行政無線」が最も多かったが、一方で、地震による電気系統の故障により防災行政無線の放送ができなかった自治体も存在した。このような教訓から、震災後には、多様な情報伝達手段の活用により伝達漏れのない体制を目指す「情報伝達手段の多層化」の取組みが進んでいる。

 本研究では、自治体の災害・避難情報の伝達体制の現状と課題を把握することを目的として、東京都・神奈川県・静岡県内の市区町村に対するアンケート調査を実施した。対象自治体数は130、回答済み自治体数は111、回収率は85.4%である。右図に、各市区町村における災害・避難情報の伝達手段を示す。「防災行政無線(同報系)の屋外スピーカー」が98.2%と最も多く、次いで「自治体のホームページ」(85.6%)、「自治体運営の登録制メール」(83.8%)、「携帯電話向けの緊急速報メール」(78.4%)、「自治体のSNSアカウント」(55.0%)の順になった。従来に比べて、携帯電話やインターネットを用いた伝達手段が普及していることがわかった。総務省消防庁が推進している全国瞬時警報システム(J-ALERT)を運用している自治体は97.3%にのぼり、特に神奈川県、静岡県では全自治体で運用されている。J-ALERTを運用している108自治体の92.6%で、「防災行政無線(同報系)の屋外スピーカー」の自動起動を行っているが、その他の手段での自動起動の割合は低かった。

 「携帯電話向けの緊急速報メール」とは、NTTdocomo、au(KDDI)、softbankから提供されているメールサービスであり、各市区町村が加入することにより、自治体独自の災害・避難情報を送信できる。「緊急速報メールに加入済み」という回答は、NTTdocomoで83.8%、au(KDDI)で77.5%、Softbankで77.5%であり、3社ともに加入が進んでいる。特に、静岡県では全ての自治体が加入済みである。加入時期は、NTTdocomoでは「平成24年」(54.7%)、次いで「平成23年」(30.5%)となった。au(KDDI)とSoftbankでは、「平成24年」がそれぞれ82.4%、80.2%を占めた。これより、携帯電話向けの緊急速報メールへの加入は、震災後の平成24年中に急速に普及したことがわかった。

 「自治体運営の登録制メール」とは、住民がPCや携帯電話のメールアドレスを事前に登録することで、自治体からの情報を得られるサービスである。緊急速報メールは輻輳なしに送信できる「PUSH型」手段であるが、登録制メールは送信時に時間遅れの可能性があるため、「PULL型」手段として位置付けられている。登録制メールも広く普及しており、運用している自治体は85.6%となった。登録人数は、平成22年国勢調査による市区町村の総人口に対して、平均で7.9%となり、利用者は一部の住民に限られている。緊急速報メールでは、「防災行政無線で放送するが、本手段では発信しない情報もある」との回答が88.2%であったのに対し、登録制メールでは「防災行政無線の放送時には、本手段でも発信する」が53.7%と最も多く、送信内容には違いが見られた。緊急速報メールは市区町村内の全携帯電話端末向けに送信されるため、情報項目を絞った限定的な利用が行われている実態が明らかとなった。

 緊急速報メールに関する今後の課題としては、「非対応の機種があり全住民に届かない」(62.1%)、「高齢者の携帯電話所有率が低い」(51.6%)、「複数の携帯キャリア専用の画面で、別々に文面を入力しなければならない」(49.5%)となった。一方、登録制メールでは、「登録者が少ない」(55.8%)、「情報発信できる職員が限られているため、夜間の緊急対応が大変である」(32.6%)、「高齢者の登録率が低い」(22.1%)となった。近年、「複数の携帯キャリア向けの情報を一括して入力できるサービス」が存在するが、利用しているのは31.6%であった。情報送信担当の職員に対する過度な負担や入力の手間による送信遅れを防ぐため、今後は、複数の情報伝達手段の統合化や簡便な情報入力インターフェースの普及が望まれる。 
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図 各市区町村の災害・避難情報の伝達手段

(大原 美保)