newsletter23号テキスト2

東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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東日本大震災から3年

長期避難・広域避難の現状と県内・県外の意識差の拡大

 東日本大震災の発生後、いまだ多くの人が避難生活を余儀なくされている。2014年1月28日現在、政府が把握できているだけでも270306人が避難生活を余儀なくされている。中でも福島県民については86578 人が福島県内で、48364人が福島県外に避難し、計134942人が避難生活を行っている(復興庁および福島県公表資料より)。なお、2012年2月段階での内閣府原子力被災者生活支援チームの推計によれば、福島県内での避難者、福島県外への避難者の合計159000人のうち警戒区域・計画的避難区域にあたる人々は約87000人であるので、それ以外の約72000人、避難者の45.3%がいわゆる「自主避難」という計算になる。

 この避難者に関する数字は色々な意味を持っている。

 第一に、人数でみればこれだけ多くの方がまだ避難生活を送っているということ、時間が経過しても劇的に事態は変わらないという現実である。直後は、除染を進めて帰還を進めることが叫ばれていた。だが時間が経過し、除染をしても劇的に線量が下がるわけではないこと、セシウム134の半減期2年までは線量が低下したものの現在では急激に下がらないこと、すなわち放射性物質の汚染の除去(汚染の低減)には相当時間がかかることが認識されるようになってきた。

 ゆえに、避難者も「帰還」といってもそう簡単ではないことを認識するようになってきている。これは復興庁が実施している住民意向調査の結果にもあらわれてきている。たとえば双葉町の場合、平成24年12月と平成25年10月の調査を比べると、「戻りたい」38.7%→10.3%、「判断がつかない」26.9%→17.4%、「戻らないと決めている(戻れないと考えている)」30.4%→64.7%と帰町意向は激減している(平成24年12月調査の「戻りたい」の数字は「自宅の補修・再建、インフラの復旧が終わればすぐに戻りたい」10.3%、「条件が整えば戻りたい」28.4%の合計)。

 浪江町の場合、平成25年1月と同年8月の調査を比べると、1月調査では帰還意向あり(「戻りたい」など他条件つき含む)39.2%、「判断がつかない」29.4%、「戻らないと決めている」27.6%であったものが、8月調査では「戻りたい」18.8%、「判断がつかない」37.5%、「戻らないと決めている」37.5%と全体的に帰還に関して悲観的な方向に推移している。他の町村も同様、帰還意向は下がってきている。県内では災害公営住宅を現在、様々なところに建設しているところであるが、時間の経過とともに、人々の帰還や生活再建に関する意識が変化し、予定通りに行かなくなってきている現状もある。

 また警戒区域を解除されたからといって、住民が戻る訳ではないことも認識されてきている。ほぼ全世帯が解除された広野町でも帰町者は23%、大部分が解除された川内村でも帰村者は約5割である(2013年12月現在)。川内村住民の多くは当初、富岡町住民と一緒に郡山市のビックパレットに避難したこともあり、郡山市に避難している人が多い。たとえば、2014年2月12日において、線量だけでみると川内村役場は0.072μSv/h、郡山市役所は0.190μSv/hと郡山市の方が高いのだが、交通や暮らしの利便性、近くに友人が一緒に避難していることなど様々な理由から多くの人が川内村に戻らないでいる。

 第二に、いわゆる「自主避難」者に関して、福島県内、また県外でも、直後ほど話題にならなくなってきているという事実である。

 1つの理由として「自主避難者」は一般に思われているほど多くはないということだ。福島県の人口は1,945,788人であり(2014年1月1日現在)、県外避難者の割合は2.5%に過ぎない(割合が少ないから問題ではないという意味ではなく、福島県民の話題として上りにくくなってきているという意味である)。仮設住宅に住んでいる方々の場合は県民が直接接する機会も多く、福島県内のメディアでも多く取り上げられるものの、いわゆる「自主避難」の方々は「見えない」。震災直後の「差別を受けるのではないか」「県から出ていった」などの中傷への不安から、あまり、声もあがりにくい。かつ、公的に把握されていない自主避難者も相当数いると考えられている。また、ほとんどが「みなし仮設」に住んでいるので、実態も明らかではない。

 今1つの理由として、そもそもとして、福島県内において、避難した人、残った人の間で様々なわだかまりがあると報じられてきたが、いわゆる「自主避難」者に対する目というのは厳しくないことである。JNN系列のテレビユー福島、TBSと筆者が行った調査では(郵送調査。2013年1月31日発送。避難区域を除く各市町村の人口比例配分。5000票発送1633票回収、回収率28.8%)、「個々人の判断が尊重されるべきだ」58.1%、「避難は正しい判断だと思う」14.0%という人が多く、「早く戻るべきだ」という人は6.2%とごく少数である。この、いわゆる自主避難については「当然だ」「福島なんて危ないから避難した方がいい」といった暴論が震災直後は多数聞かれた。だが現在はそのような声も少ない。一部の人の意見にも関わらず、メディアなどで増幅されていたことの証左であろう。

 震災から約3年経過し、福島県民の多くは、ある程度、日常を取り戻しつつある。また県外では、そもそも福島原発事故に関する関心が薄れてきている。関心が薄れつつある中で、きちんと広域・長期避難の様態を継続的に明らかにしていくこと、福島県内、県外の住民意識の「温度差」を埋めることが必要である。

 (関谷 直也)