大阪北部地震と東京の東日本大震災

特集:2018年度の災害を振り返って

関谷直也
2019年3月1日

 大阪北部地震は、東日本大震災時の東京の状況を時間帯を変えて再現したような都市災害であった。東日本大震災の東京では死者7名、重傷者22名、大阪北部地震では死者6名、重傷者20名であった。大阪北部地震ではブロック塀倒壊による死亡事故に焦点が当てられたが、広域に見れば、①ライフラインの停止、②鉄道網の停止による移動の困難、③交通網の停止などによる物流の混乱など、そこまで被害が大きくないものの、大都市災害ならでは災害として東日本大震災時の東京と同様の都市機能の混乱が発生したといえる。
 ライフラインに関しては、電気の停電、ガスの供給停止、水道の断水、電話の通話制限などがなされたが、最も混乱を生じさせたのは、鉄道網の停止による移動の困難であった。東日本大震災は金曜日の14:46に発生したので帰宅困難者が問題になったが、大阪北部地震は月曜日7:58に発生したので出勤困難者が問題となった。なお、混乱は一日続き、帰宅時の混乱も問題となった。580万人(朝日新聞)〜540万人(産経新聞)に影響があったというが、これは推計の違いは当然あるにしても、東日本大震災の時の東京の規模に相当する。
 我々の調査*1では、地震発生時、自宅で出勤前だった1,271人のうち、57.6%の人が「自宅にいたが、いつもと同じ時間に勤務先に向かった/向かおうとした」と回答している。出勤に支障が生じたのは4割程度であった。なお、企業から指示が出たという人は32.8%。うち「出勤を促す指示」が27.3%、「出勤を控える指示」が72.7%と割れている。結果的には交通機関が回復していないなの、多くの従業員が出勤した/出勤しようとしたため、帰宅時間帯まで混乱が継続した。
 また、鉄道にとどまらず、交通渋滞などによる物流の混乱も発生した。上記とは別の我々の調査*2では、「地震発生後1週間で物流に関することで困った」と回答した人は14.2%。うち、「スーパーやコンビニが品薄で十分な買い物ができなかった」との回答は61.1%であった。大阪の全域ではないにしろ、一部の地域ではモノ不足、品薄が発生していたことがわかる。なお「普段とは異なる消費をした」という人は3割程度であったが、このような状況が発生した。これは一部の人が平時より多めに商品を購入するだけでモノ不足が発生するということであり、東日本大震災と同じモノ不足現象が小規模で発生したということを意味する。なお、「ティッシュやトイレットペーパー」、「水」、「米やパン」、「インスタント食品」に買いだめ傾向(「モノ不足になっているのを知ったので」購入したとの回答がやや多い傾向)があり、これも東日本大震災と同様であった。
 この東日本大震災時の東京都の被害や大阪北部地震の被害の程度は大きいとはいえない。にも関わらず、鉄道網の停止による移動困難、物流の混乱が発生した。都市とは人、モノの広域異動を効率化したところに成り立っている。ある意味、地震の規模の大小にかかわらず、これらの都市災害は避けて通れないことがはっきりしたということでもある。首都直下地震や都市部の大規模災害など、より大きな災害では異なる混乱が、必ず発生する。これらを念頭に入れて防災対策を実施することが必要である。
*1 大阪府北部地震(出勤困難)に関する調査(近畿4 府県、1920 人)[online] https://www.surece.co.jp/research/2543/
*2 大阪府北部地裟(買いだめ)に関する調査(近畿4 府県、800 人)[online] https://www.surece.co.jp/research/2711