研究レポート No.02

東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

cidir_logo2012.jpgcidir_logo2012.jpgcidir_2012gmanu00.jpgcidir_2012gmanu01.jpgcidir_2012gmanu01.jpgcidir_2012gmanu02.jpgcidir_2012gmanu02.jpgcidir_2012gmanu03.jpgcidir_2012gmanu03.jpgcidir_2012gmanu04.jpgcidir_2012gmanu04.jpg

HOME > 研究活動 > 研究レポート No.02

newslettertitle.jpg

研究レポート

●研究レポート No.02
北京や上海でも大きく揺れた四川大地震の長周期地震動
text by 古村 孝志(2008年7月24日掲載)

 四川大地震の揺れは、震源から1500キロメートル以上も離れた北京や上海、そして台北でも感じられ、揺れる超高層ビルから避難する騒ぎがおきるなど、中国全土の広い範囲に影響が及びました。

 アメリカの地質調査所(USGS、IRIS)は、短周期から長周期まで広い周期帯の地震動をとらえることのできる「広帯域地震計」を世界に設置しており、北京や上海の地震計記録を調べると、この大きな揺れの正体は、揺れの周期が10~20秒になる「長周期地震動」であったことがわかりました。今回の地震の規模は、M8クラス(USGSによるとMw7.9)であり、この巨大内陸地震の震源から、周期が10秒を越えるような長周期の地震波が強く放射されました。短周期の地震波は、震源から離れるとともに急激に弱まりますが、長周期地震動は、遠くまでほとんど弱まらずに伝わり、平野に大きな揺れを起こします。さらに、震源の深さが浅かった(十数キロメートル未満)ために、長周期地震動が地表面に沿って「表面波」として広がったことも、遠地まで揺れが弱まりにくかった原因と考えられます。

図1は、スーパーコンピュータ(地球シミュレータ)で再現した、四川大地震の揺れの広がる様子です。震源近傍の四川盆地で長周期の表面波が強く発生し、およそ3キロメートル/秒の速度で、7~8分後には北京や上海に到達したことがわかります。これらの平野では、長周期地震動の揺れが10分間以上にわたって長く続いたことも確認できます。今回の計算では、平野の柔らかい堆積層が完全に組み込まれていませんので、計算結果は揺れを半分程度に過小評価している可能性があります。こう考えると、北京や上海では長周期地震動により20cm程度以上動いた可能性があります。

 長周期地震動のゆったりとした揺れは、歩いている人にはそれほど揺れを強く感じられないかもしれません。ところが、超高層ビルや大型の石油備蓄タンク、大河や湾に架かる長大橋などの「長大構造物」は長周期地震動と共振を起こして大きく長く揺れる恐れがあります。このときの建物の揺れは、地面の揺れより2~3倍大きく、また長く続くことに注意が必要です。世界各地で超高層ビルの建築ラッシュが続く中、将来、都市の近くで大地震が発生した場合の影響が心配されます。周期が7秒を越える長周期地震動は、M7クラスの大地震、そして10秒を越える地震動はM8クラスの巨大地震が起きて初めて強く発生するため、日常的に起きる中小地震ではなかなか気がつかないのです。

cidirR&C-front200807-China_Simu.jpg

図1 四川大地震の揺れの広がり方(地震後30秒、4分、8分後の揺れの広がる様子)。地球シミュレータ(海洋研究開発機構)を用いた計算。下図は、北京のIRIS観測点で記録された地震動(速度波形、南北動成分)。

【MPEGアニメーションはこちら】

 四川大地震の長周期地震動は、日本でも観測されました。図2は、防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)の800観測点で記録した、地震後14分、18分、22分後の揺れの広がる様子を示したものです。揺れの強さを色の濃さと高さで強調して表示しています。
 また、18分後の画像を見ると、関東平野が大きく揺れている様子がわかります。東大地震研究所に設置されている広帯域地震計の速度記録を調べると、周期が10~20秒になる長周期の地震動(表面波)が最大0.5cm/s程度の強さで20分以上にわたって長く続いたことがわかります。

cidirR&C-front200807-China_Hinet.jpg

図2 日本列島を伝わる四川大地震の表面波(長周期地震動)。高感度地震観測網(Hi-net)データを用いて揺れの伝わる様子を可視化(地震後14分、18分、22分後)。下図は東大地震研究所で記録した揺れ(地動速度、南北動成分)。

【MPEGアニメーションはこちら】